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悦に浸る

『みんなね、人間って丸いもんが好きなんだよね、なんかさ、丸いものって、手にもってるだけで安心するでしょう。そしてじっと持ってるとだんだん悦に浸ってくるんだよね。』

ナオキさんが小さく丸い器を手のひらで包みこみながらそう言ったことがある。

なるほど。”悦に浸る___” いい響きだ。

ナオキさんの口から出てくる言葉には魔法にかけられたネズミのようにみんなコロリとやられてしまう。

まるで教祖さまを見つめる信者のように、『まったくその通り』だと思ってしまう。

ナオキさんはミュージシャン畑の情緒豊かな人で、人がぐっとくるツボを認知している。

普通の人が言ったら『さむ~!』と言われそうなねっとりした言葉もさりげなく、そしていやみなくさらりと言ってのけるところが素敵だ。

”悦に浸る。” 何度かその言葉を繰り返してみた。

丸い器___。

そうなのか。いままでなにげに作ってきた器がそういうふうに感じられていたのなんて。

改めて丸い器を見つめてみる。

コロンとした器は口が内側にちょっと入り込む形状なので重ね辛い短所もあるが、とぼけたようで、空気を包み込むような柔らかい表情は愛嬌がある。

確かに安心感を与える。

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