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黒い毛の羊


アメリカで普通のスーパーのエスニック食材の棚をチェックすればその町の文化レベルを判断することができる。醤油の種類がどれくらいあるか、とかでアジア人人口がどれくらい占めているのか、もしくは人々の好奇心レベルや食文化に対する意識がどれほどのものであるかが一目で判断できる。

ちなみに今私が住んでいるUnionのスーパーでは醤油の種類がいくつ、どころか、カップヌードルとメキシカンが同じ棚に並んでいるレベルである。

ガソリンスタンドでエンジンオイル、手袋、懐中電灯、ガムテープ、タンポンが一色単においてあるスタイルとあまり変わらない。(*アメリカでは殆どガソリンスタンドとコンビニが一緒になっている)

メイン州に存在するアジア人の人口は佐賀県に在中の外国人の比率と匹敵するであろう。

もっとわかりやすく言えば、アジア人にとってのメイン州は、相撲協会の中の白人力士の環境と似ている。

他のみんなと同じような格好をし、同じ言葉を話してみてもどことなく目立ってしまう存在なのだ。

もともとアジア人は目立ちたがりではないので、なんだかどことなくやりにくそうな印象を受ける。

先日友だちのお誕生会で4人ものアジア人と出会ってびっくりした。

ただでさえ人口の少ないこの町でこんなにもアジア人が存在していたとは!

しかも、殆どの人がアーティストで、その中の一人が15年以上も前にコロラドのアートセンターで自分と会った事を覚えていてくれて、(あいにく自分の記憶の中からは吹っ飛んでいたが)なんだかうれしかった。

あとは『Suzuki』(日本食レストラン)のオーナーシェフを残せばここいらへんにいるアジア人全員と会ったことになる確信がもてる。

カリフォルニアなど比較的にアジア人人口が多い地域ならともかく、ここメイン州でアジア人が他のアジア人をみかけるとどうしても気になってしまう。

『奥さん、あんた、ここ何年目?』

『そやかて、あんたもいろいろたいへんでっしゃろ〜』なんてお互いに関西弁的感情で話してしまっている。

『あんたは、なんでまたメインを選んだのか?』

お互い自分自身に問いただしていることを改めて他の相手にも聞いてみたくなる。

みんなどこか一匹狼的な面を持ち合わせていたり、パートナーが白人でやむを得ずメイン州に住む事情がある、あるいは、ここをカナダだと勘違いしていた、とかいろいろ理由はあるが、皆『もの好きだから』ということには間違いない。

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