自然のちから


もう昨年のことになるが、ようやくはじめて自分の城を構えて以来、脇目もふらず、ただ一直線に突っ走っていた。一瞬たりとも休まず全力疾走で。ある日、あまりの神経衰弱にこれではまずいと思い、気分転換に近所の山道を散歩する事にした。曲がり角の木の枝には新緑の葉がちょうど開いたばかりだった。いつもは素通りしている木だったのだが、その木がなんだか私を出迎えてくれているような気がした。眺めているうちに体の芯が熱くなり、気がついたら涙がぽろぽろと頬をつたっていた。悲しいでもなく、嬉しいでもないわけのわからない感情だったが、その木が『感動する』事をしばらく忘れていた自分に気付かせてくれたのは確かである。