自分に酔いしれる瞬間



P子がけたたましい声で自賛しているので台所へ駆けつけてみるとそうめんの出汁の残りをピッタリの容器に入れのけていた。

いかに残り物の量とジャストサイズの容器を選び抜くかも主婦としての能力が定められる。というと大袈裟かもしれないがこれがなかなかムズカシイ。

大は小を兼ねると言えども、容器があまりにも大きすぎても空白がマヌケだし、第一、冷蔵庫のスペースをアホみたいに取りすぎてしまうのはバカバカしい。

しかし、粋がってで小さすぎる容器に入れてしまった場合、全部入りきれなかった物悲しさ、かといって、又別の容器に入れなおしても洗い物を増やしてしまう腹立たしさに自己嫌悪に陥ってしまう。

自慢するが、私は荷造りが得意である。

あらかじめ全体量を考えて箱の大きさを見極めないといけないのは『残り物容器選び』のシチュエーションと似てはいるが、立体を立体の中に入れるという作業は3Dパズルのようで液体が四方に流れ込む様にはいかず、うまく組み合わせを考えてまとめないと箱の中にうまく収まってくれない。

母方の祖父は私が生まれる前に他界している。

『ねえ、おじいちゃんって、どういう人だった?』と母に尋ねると決まって応えてくれるエピソードの一つに、祖父が引き出しの整理をしていた話がある。

ある日、祖父が姿勢を正して丁寧にメモ用紙、ペン、鉛筆、定規、それぞれ収まりがいいように引き出しの中に並べていた。すると、端にぽっかりと小さい余白が出来てしまった。うーん、さてさて。これじゃあ、せっかくの仕事の見栄えがよろしくない。と、目についた消しゴムをその余白に入れてみたら、スパッとはまるではないか!母に始終を目撃されている事を知らない祖父は鼻の甲を膨らませて満足していた。

おさまりりがいいことは気持ちいい。洋服ダンス、本棚、ファイリング、冷蔵庫、引き出しの整理。整理整頓は正直、常にやっていることではないが、その分やってしまうととことんきりつめて挑んでしまう方で、美しい出来映えに完成した時は自分に酔いしれる瞬間でもある。用もないのに引き出しを開けてみてシャキッとしている中身を確かめてはニヤッとしてしまう。


私の叔母は潔癖性で色物のパンツと白地のパンツは別々の引き出しに入れているらしい。私はそこまできりつめてはいないが、小さい頃、時間割を作ることが趣味で、遊ぶ時間、勉強時間、食事の時間、寝る時間、などなど、それぞれ違う色で識別し、その色彩を眺めては惚れ惚れとしていた。

もちろん、時間割を作る喜びだけが存在し、時間通りに行動した試しはいちども無いが。

最近もう一つ、自分に酔いしれる瞬間がある。

スパッと切れる包丁でネギの千切りをする事だ。

これは背筋がゾクゾクするほどたまらない。

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