いつも見る風景なのだが、いつ見ても感動する風景がある。
唐津の家路の登り際に見える、曲線美に満ちた丘。
ススキが野原一面にゆらめいている。
谷間には黄色く色づいた田んぼが段々と連なる。
多くの人にはどうってことない風景かもしれないが、私はこの風景をみると母の懐にはいったような気分になる。
夕日が一段と金色色に染めている。
今は特に秋の気配がただよっていて、こんな色でセーターを編んだら素敵だろうな、と思う暖かい色。
こんな風景を見るたびに思い出す人がいる。
彼女は残念ながらもうこの世にいない人となったが、なんとなく、まだ進路に迷っていた20代の自分の背中をひょいと押してくれた人だった。
シス トムセンというデンマーク人で、ヤキモノを作ったり、絵を描いたり、詩を書いたりしている人だった。
彼女が晩年独りでムーン島という小さな島で過ごした日々の写真集/詩集をみせてもらったことが今もすごく心に焼き付いている。
彼女は毎日同じ場所で彼女の目に映った風景を写真に収めた。けれども、一枚とも同じ風景は無かった。それぞれの季節、それぞれの時間、そして彼女の気持ちもまた違っていた。
美しいものはなんともないところにも存在している。ようは感動する心が大事なんだと気付かされた。
それはずっと忘れずにいたい。
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