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大蛇と出くわす


私は蛇が大のニガテである。 蛇に限らず(人間を基準に考えて)足数の少ないものも多いものもダメである。 ムカデもその一例である。 生き物はなんでも可愛いという人がいるが、ヘビやムカデはどう贔屓目にみても、とてもキュートだとは言い難い。ニシキヘビなんかを裸体に巻き付けて『ファッション』だと粋がってる人たちは気が狂っているとしか思えない。

油をぬったように体をテカテカと光らせたムカデ。足をぞろぞろと運ぶイデタチは不気味さ極まる容赦である。 やきものの修行をしていた隆太窯時代は恐怖の連発だった。ムカデはジメジメしたところが大好きだ。常にジメジメしていて薄暗〜い土置場はムカデにとってのパラダイス。粘土を取りに行くのは弟子の仕事。私はこの仕事がイヤでイヤでたまらなかった。 ただ単に足がやたら多いが為にこんなにもひどい仕打ちをされるとは哀れ。とは思いつつも、ムカデと出くわしたその時はめった打ちに叩きのめしてしまう人間の非常さ。そこには『かわいそう』とかいう慈悲の心や理性なんかは働かず、『殺らねば殺られる!』一瞬として野獣と変貌した大のおとなが血眼になって虫一匹と戦ってしまう。ムカデは必ず夫婦でいると言われる。夫の敵討ちにいつ女房ムカデが襲ってくるかわからないから油断は出来ない。

その日はしとしと小雨が降っていた。 松の木が所々に植えてあるその散歩道は私のお気に入りの場所であり、霧がかかっている夕暮れ時も情緒に満ちた光景であった。 ふと松の木の根っこに目がとまり、なんか不思議なかたちの根っこだな、と思いきや、それが松の根っこではない事が判明した。『!』ややっ!ヘビではないかっ!!!!それがヘビだとすぐに気付かなかったのは、そこらへんにいるヘビに関する私の常識を遥かに超えた異常なサイズであったからである。胴体は私の腕くらい、長さはまっすぐに伸ばせば2Mは軽く超えたに違いない。決して大袈裟に言ってはおらず、動物園以外でこんなにも大きなヘビが存在する事が信じられなかった。しかも私のすぐ近所にいるなんて!恐怖で脊髄がずずん、と崩れさる思いだった。必死の思いで猫のビーン(私の猫は散歩する変わった猫です。)と犬のチューカをたぐり寄せて一目散に逃げ帰った。

その大蛇は『青大将』という大物だと判明した。小さいころからその名はよく耳にはしていたが、生まれて初めて出くわした。青大将はよく家の守り神として褒め奉られているらしい。しかしだ。例えどんなにヘビが自分ちを守ってくれていてもあんな大きなヘビだと申し訳ないがすぐさま出て行ってほしい。運動神経の鈍いヘビだっているに違いない。梁からボテリ、なんて落ちて来たりしたらたまったもんじゃない。

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