ひとつの器から



先日も5日間、東京に出張した。

普段田舎住まいの私は都会の空気に触れるだけで菜っ葉に塩をかけたように、気分が『しなっ』となってしまう。

東京は歩いている人たちのスピードが違う。

新宿駅だけでも一日に何百万という人たちが交差している。

電車の中で忙しそうにやたらパチパチとメールを打っている人たち。

そんな情景を眺めながら、『実際、この人たちは生身の人間との付き合いがどれほどあるのだろうか?』と考えてしまう。

自分がとても場違いなところへ来てしまっていて、しかも自分がやっている事が無意味なような気持ちで圧迫されそうになる。

そんなさなか、展覧会である女性と出会った。彼女は長い間、じっくりと時間をかけて私の器を吟味していた。そしていろいろ迷ったあげく、白磁の器をひとつだけえらんでくれた。

彼女は東京に独り住まいで、しごとも忙しく、食べることがおごそかになり、いつもは工業製品の壊れにくい器をつかっており、だけど最近それがむなしく感じるようになった、という。以前は家族と一緒に住んでいたけれど、実際一人暮らしをしてみると家族のありがたさがわかり、ごはんは一人で食べるものではないと気付いたらしい。友だちでも呼んで食事をしたいのだけど、友だちの分の器もないし、だから友だちを呼んでもいいように良い器が欲しい。けれども、基本は自分の幸せのために良い器が欲しいのだ。これからはもっと丁寧な生き方をしたい。といういきさつなのでした。

こんな人と出会うと、やっぱりこの仕事をやっててよかったと思うのでした。わたしのやきものは『作品』としてではなく、人々の生活の中にとけ込む『うつわ』のひとつであって欲しいし、また、ひとつの器から人々のしあわせの輪が広がることを願っています。

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