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なんでもない器

アメリカ人は褒め上手で”Your work kills me!”とか”Your work brought me to tears!”とか歯が浮くようなお世辞を言ってくれる。

自分はおだてにのりやすいのでそう褒められると素直に喜ぶのだが『いえね、実際私も自分の仕事に殺されそうだったんですよ』と言い返したくなる程ずっと忙しかった。

自分が『戦争』と呼んでいる制作活動もそろそろエンドラインが見えてきたが、ここのところぶっ通しでひたすら仕事ばっかしてた。 腕が肩からもげそうで、疲労感が10本の指の先まで染み込み、本当にもうわたし死ぬかも、と思う時さえあった。

でも死ぬほど仕事しないと生きてる感覚がしない貧乏性の自分が悲しいけどこれも性分だから仕方ないとおもう。壁に頭をぶつけ続けて、それをやめた時に『ああ、やっと終わった、』という開放感が好きだから壁に頭をぶつけ続ける人、みたいな。

疲れた時は寝る前に焼酎を飲む。

ニューヨークから遊びにきた日本人の友だちからもらった。

私の好きな芋。

これをなんでもない器で飲む。

なんでもない、主張のない器ほどロングランはないとおもう。

ぱっと見、目立たないけど安心感がある。そしていつあっても嫌気がしない。そして飽きない。

うつわも人間も同じだとおもう。

空気のような存在こそ心地よい。

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