『ヤクザかな〜?』といってPがニタニタしながら焼魚を焼いている。
オヤジギャグ好きなのだ。けれど自分も『うこん』を『うんこ』とわざと間違えてよろこんでしまう小学生のようにギャグレベルはかなり幼稚なのでちょうどよい相手だ。Pが日本に来て3年経つが日本語にまだフラストレーションを感じているようだ。動詞の活用法の勉強にと『ブタがブタをぶったのでぶたれたブタはぶったブタをぶったたいた』と教えてあげたら最初は感心していたが、そんな言葉をいくらおぼえてもいっこうにラチがあかないと悟ったらしく、今年から本格的に日本語のレッスンを受けるようになった。
ジョイフルでおかわり自由だけどまったくジョイフルでない350円のコーヒーをすすりながらのレッスンらしいが、日本語の先生はとても良い先生らしく、毎週うきうきしながらレッスンに通っている。
『きょうはね、どうしのたい、と、させて、と、ない、をならいましたよ。たとえばね、ぐるーぷワンのどうしはね、あるく、だからあるきたい、ぐるーぷにのどうしはね、たべたい、そして、ぐるーぷさんのどうしはね、したい、とか。わかる、花子?』
『...』
まるでラブストーリーでも読むかのようにギラギラと目を輝かせて文法の本を読みふけっている。
『P子はね、ぶんぽうだいすきになりましたよ!よんであげようかこの本?おもしろいよ!』
あんまり文法オタクになられても困るので日本語の映画でも観ることを勧めた。
邦画はあまりみないほうだが、それでも伊丹十三監督の『たんぽぽ』は私のお気に入り映画トップ10には入る名作だとおもう。テンポといいユーモアのセンスといい、いつみても良く出来ているなあとおもう。しかもおかしいほどエロい。アメリカの9&1/2WEEKSも『たんぽぽ』に影響を受けたのでは?と思うほど。
『わたし、生ガキだけはだめなのよね。あれみるとなんだかはずかしくなっちゃってねぇ。』
ヒラマツさんとの会話に『あー、それわかります!わたしもダメですぅ!ガハハ!』なんて笑ってごまかしたことあるけど、『たんぽぽ』はそんなオンナゴコロも無視したきわどいシーンがある。
私のお気に入りのシーンはマナー教室でスパゲティを食べるシーン。ある高級レストランで西洋料理の食べ方のマナー教室が行われており、『スパゲッティはけっして音をたててはいけません!』という先生の忠告があった矢先、傍らで西洋人が音をズバズバたててパスタを食べているのを生徒がみてそれを真似してしまうところ。でもこれはありえないとおもう。西洋人は音をたてたくても音をたてられない。すぱっとキレ味よく吸い上げるという習慣がないので西洋人の唇の筋肉は東洋人のようにうまく出来ていない気がする。
ああ、急にラーメンがたべたくなったね、と映画を見終わった翌日さっそく『関東軒』へと駆け込んだ。
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