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おやじ願望

友だちに『蛋白王子』というあだ名のベストフレンドがいて、貧乏な私たちはとても食べてないだろう、と気をつかってたまに上質のお肉を手土産にうちを訪ねてやって来る。

それと共に上質のワインまで持ってきてくれるもんだから本当に王子様的存在だ。

『あんたは良い友達に恵まれていいね〜』と嗅覚の利いた母も隣からやってくるのでしぶしぶ宝物をシェアしなければならないが。

ワインを片手に『わたしをお酒に例えるならこのロマネコンティかしら?』なんて気取って言ってみたら、

『バカ言え、お前は芋焼酎だろ!』と即座に断られた。

だけど、芋焼酎も悪くない。

ホネがあってお人好しっぽいところがいい。

いつも焼き鳥屋にいくと必ず芋焼酎をロックで頼む。

自分は小さいころから焼き鳥屋なんかのオヤジワールドに憧れていた。

焼き鳥屋に行くとかならずオヤジの2、3人組みたいなのがいる。

彼らの間に会話はさほどなく、たまにぼそぼそっと低い声でつぶやきあい、テレビを見つめながら(でも番組にさほど集中している気配はない)熱々の焼き鳥をむさぼることはなく、タバコを吹かしながら4、5本の焼き鳥を長〜い間かけてゆっくりとつつく、みたいな。

そんな光景を目にすると、私もあれ、やってみたい、と思う。

オレ、何も考えてないもんね、みたいな投げやりな態度で宙をみつめながら、焼酎をちびり。なんて素敵!

同級生がやっている焼き鳥屋があるので地元ではいつもそこへ行く。

今晩はオヤジで行くで!とジャージ姿で挑んでも、ついつい熱々の焼き鳥がくるとむさぼるように平らげてしまう。

第一、注文する量からオヤジとは違う。お腹をすかせて行くのであれこれと注文してしまう。で、一度にいろいろ来るもんだからついつい焦って食べることに集中してしまう。

その度にまたあんた失敗したね、とPにからかわれる。

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